<Azeitao>
アズレージョ工房 〜Sao Simao Arte サン・シマオン・アルテ
ポルトガルを代表する伝統工芸のひとつにアズレージョと呼ばれる装飾タイルがあります。ポルトガルには
国のいたる所にアズレージョで装飾された建物が見られます。それはまるで美しい包装紙でくるまれたような
街並みのようです。アズレージョには古い歴史があり、幾何学模様を組み合わせた連続模様のデザインや、
何枚ものタイルを組み合わせて一枚の絵に仕立て上げた物など様々なスタイルがあります。
アズレージョで装飾された教会 ポヴォア・デ・ヴァルジンのタウンホール
今回は2010年の夏に訪れたアズレージョ工房「サン・シマオン・アルテ」をご紹介致します。ポルトガルには
多くのアズレージョ工房がありますが、この工房はリスボンのテージョ川の対岸、セトゥーバル近郊の村
「アゼイタオン」にあります。工房によって、タイルの厚みや焼成温度などに違いがあるようですが、以下は
サン・シマオン・アルテでの製作技法です。この工房のタイルは、窯などは現代の物も使用しますが、技法は中
世の頃より伝わる伝統的なものです。
Sao Simao Arte HP
アズレージョの製作工程
1)まずはタイルの素地作りです。ポルト近郊で産出されるショコラーテ(チョコレート)と呼ばれる粘土を、クッキーを
作るようにのばして正方形にカットします。16×16センチで1.5センチの厚さに作りますが、この厚さは焼いた
時に壊れにくく、焼き上がりの大きさも定型の14×14センチに近い物が出来ます。これを夏場は1.5ヵ月ほど
冬場は6ヶ月ほど自然乾燥させます。
2)乾燥したタイルを電気釜で1100℃で18時間かけ焼成し素焼きのタイルを作りますます。4枚づつ重ねて焼くと
温度が均一になり割れにくくなります。時間をかけて焼いた物は丈夫ではありますが、この時点で約15%の物は
割れたりヒビが入ったりしており廃棄されます。焼き上がった物は大きさが若干まちまちなので、定型の14×14
センチの大きさに電動やすりで研磨します。この14センチという大きさは7枚並べると約1メートルになるので、
建物に貼る時の目安になります。この彩色前のタイルはビスコイト(ビスケット)と呼ばれています。
3)焼き上がった素焼きのタイルにグレースと呼ばれるガラス質の白い上薬をかけます。これはすぐに乾くので、すぐに
下絵を描く事が出来ます。下絵にはトレーシングペーパーに線書きした絵に針で穴を開けた型紙を使います。この
型紙を素焼きタイルにあて、炭の粉が詰まった小さなポンポンのような袋でサッとなでれば下絵を写す事が出来
ます。
1)タイルの生地作り 2)自然乾燥されたタイルを窯で焼きます 3)素焼きタイルに型紙で下絵を写します。
4)いよいよ絵付けです。下絵にそって彩色していきます。手元を安定させるために棒を支えにする事もあります。
5)彩色されたタイルを窯で焼き上げます。彩色後のタイルは専用の棚に一枚づつ並べて窯に入れられます。
1100℃の窯で、青一色のタイルは9時間、その他の色のタイルは8時間で焼き上がります。
6)出来上がり。焼き上がったタイルは表面がガラス質で非常に固くなっています。カットする時はダイヤモンドカッ
ターのような固い刃でなければ切る事が出来ません。ここの工房のように古い技法で作られたタイルの表面には
クラック(細かなヒビ)が入ります。
4)絵付け。手元を棒で安定させて。 5)色付されたタイルを焼きます 6)出来上がり
焼き上がりの色見本です 棚にいっぱいの型紙 たくさんの絵具
製作中の特注品。カッコイイ〜♪ 色んな作品がズラリ
工房見学の後は、お楽しみのお土産タイム♪
工房の隣にはお店も併設されており、アズレージョやこの工房で作られている食器なども買う事ができます。
工房の写真と工房製の食器 いろいろ 右下)コインブラの「大きな子供」
右下の写真のお皿のモチーフになっている女の子について面白い話を聞きました。
この少女は「メニナ・ゴルダ・ディアム(大きな子供)」と呼ばれる、コインブラの見世物小屋に出演していた160Kgの
子供だそうです。1814年に16歳で亡くなったそう。わざわざお皿のモチーフに取り上げられる位ですから、日本で
言うところの「仙台四郎」のような存在なのでしょうか。
工房のお隣さんの家。表札はもちろん工房製!
「私のおじいちゃんとおばぁちゃんの家」って書いてあります。工房の前の石畳はアズレージョ柄!